原作でも映画でも最も見る者を惹きつけるものになったのではないだろうか。
全国で上映中の『るろうに剣心 The Biginning』。
あらすじ
月伸宏の人気漫画『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』を原作とする実写映画シリーズの第5作にて完結編、前作『るろうに剣心 最終章 The Final』と対をなす二部作の後編にあたります。本作では原作のエピソードの中でも絶大な人気を誇る「追憶編」をベースに時代をさかのぼり、佐藤健演じる主人公・緋村剣心が“人斬り抜刀斎”だった頃の激動の幕末期、そして剣心の人生を大きく変えることになる知られざる出来事を描きます。
動乱の幕末。緋村剣心は、倒幕派・長州藩のリーダーである桂小五郎のもとで暗殺者として暗躍し、最強の人斬り“緋村抜刀斎”として恐れられていた。そんな折、暗殺の現場で若い女・雪代巴と出会った彼は、幕府の追手から逃れるため一緒に農村へ身を隠すが……
人斬り抜刀斎のころの剣心
今までの剣心とは全く異なる、惨殺を繰り返していた「人斬り抜刀斎」の頃。
巴と出会い動かされる人斬りの心。日の丸の未来を思うまだ少年とも言える剣心の心。そして巴の想い。
上映中はひたすら心がちぎれそうになった。
キャストが発表された時、これは絶対良いものがみれると感じた。
ビジュアル解禁の時の有村架純の姿は、巴そのものであった。
色白で品があり、かつ凛としている。
かつて抜刀斎に惨殺された婚約者の無念を晴らそうと剣心に近づいたにもかかわらず
いつしか剣心に惹かれていき、最後には剣心を助けるために剣心に惨殺されてしまうという、聞いただけではとてもかわいそうに感じてしまう人生。
だが、実際に映像で見ると、巴は短いながらも幸せを感じ取れていたことがわかるはずだ。巴が剣心と過ごす中で見せる表情、彼女が残した日記、そして最後の言葉。
切ない、儚い、悲しいなどという言葉では語り尽くせないほどの色んな感情が生まれ、涙なしでは見られない映画である。
注目ポイント
1.剣心の表情の変化
人斬りとして暗躍する中で、剣心の心は荒んでいく。新時代のためとはいえど、人を斬るということに対する罪悪感を常に感じていたのだ。そんな剣心も巴と出会ってから少しずつ心が安らかになり始める。よく笑うようになり、「眠る」時にも変化が出始める。もともと人前で寝ることがなかった剣心が、初めて巴の前で眠りこみ、京の外れで2人で暮らし始めてからは、刀を抱いて寝ることがなくなった。最後には共に布団で寝るようにまでなっている。巴と暮らすことで本当の意味での「幸せ」を感じ取ることで、心が癒されていくその過程が反映されている。
2.巴が剣心に自分の過去について語るシーン
いつもは物静かな印象の巴が初めて感情を露わにするシーンで思わず見入ってしまう方も多いのではにだろうか。有村架純の確かな演技力がこの独白シーンを映画の見せ場の一つにしている。また、ここでも剣心の表情にも注目したい。巴に婚約者がいたことへの驚き、そしてその婚約者が亡くなったことに悲しみ泣く巴を見る表情。言葉でなく表情だけで剣心の感情を表している。こう言った場面も今までのシリーズには見られなかった部分である。前作までの剣心は表情+言葉で語る場面が多かったように感じるが、The Beginningでは言葉数が少ない。巴も愛想がないと冒頭で言われているが、彼女も言葉が少なく、表情と行動だけでその感情を表すシーンが多い。
3.二人が交わっていくシーン
このシーンは短いがもとても美しかった。佐藤健、有村架純のファンからすると思わず目を覆いたくなるかもしれないが、ここも本作の見どころの1つだ。
2人の間にあったのは、熱く燃え上がるような恋ではなく、少しずつ互いを想いやるようになり、徐々に心の奥底から湧き上がってくるようなもの。「幸せを守りたい」「この人を守りたい」とお互いの想うようになっていった二人の感情が最高潮に達する瞬間を繊細に描いており、ここまで美しい愛はないのではないかとまで感じた。
漫画原作かつ時代劇の中で、ここまで美しく儚い物語は見たことがなかった。
剣心が流れるように美しく、そして残忍にも人を切っていく様。
巴の強くも優しく繊細な立ち振る舞いや言葉。
二人が交わり、心を通わしていく様子。
原作を忠実に再現しながら、洗礼された映像作品として完成していた。
安藤政信、北村一輝といった独特な味がある豪華な俳優陣が剣心の脇をかため、そしてロケ地には日本全国11カ所を使用。
ここで語り尽くせないほどの良さがまだまだ本作にはある。
劇場公開は終わってしまっているが、サブスクでの配信やDVD発売後にはぜひ手に取り、剣心と巴の物語、人斬り時代の剣心を見た上で、1作目から再びるろ剣シーリズを完遂していただきたい。